火のないところに煙はたたない。


日の沈んで暫くして、西の向こうで火事があった。僕はベランダから眺める。
日のあるうちには見えなかったが、夕日に重なっていただけかもしれない。外はもう随分騒がしい。路地から大通りまで人で溢れかえっている。

うちの前まで人がいる。

事故なのか、ボヤなのか、ひょっとしたら放火かもしれない。が、誰もそんな事は気にしていない。野次馬も、消防隊も、そんな事はお構いなしなのは、まあ当たり前である。

張本人もそれどころではないのですから。

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ベランダから耳を傾けるに、タバコの火の不始末らしい。
毎日パチンコ通いの親父だったらしい。
娘に手もあげていたらしい。
母親も酒癖が悪かったらしい。
娘さんは美人らしい。
でも家出中だってよ。


派手な放水が始まる。遠くから見ていれば、タダで観られるショーだ。


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ショーが終わればお客は帰る。僕も煙が収まらないうちにカーテンを閉めた。
翌日、外の空気は何となく黒く、焼けた埃のような匂いが漂っていた。昨日のうわさもよく耳にした。


原因は火が消えて幾日かしてからはっきりする。ガス管にヒビがはいっていたとか。うちにもガス会社から点検のお知らせが来た。


ベランダから聞いた話は殆どウソだったが、火のないところに煙はたたないし、ね?


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